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皆さん、あなご(穴子の稚魚)は日本海溝から ・・・・・・・・知ってましたか! |
日本では、穴子の研究をしている「穴子漁業資源研究会」という組織がございます。
この研究会には全国の水産試験場、東京大学、東京水産大学、東海大学、九州大学、宮崎大学などの水産学を研究する教授の方々が参加され、穴子の生態について
研究がすすめられています。
穴子の生態についてはウナギ同様未だに不明なことばかりですが、年を重ねるごとに多くの状況証拠によってその生態が解明されつつあります。
私がこの研究会に呼ばれる切っ掛けになったのは、瀬戸内海特に広島湾での穴子の水揚げ状況や漁師の方々とのつきあいの中で教えていただいた漁場のこと等の情報を提供するためでした。
この穴子漁の風景ははえなわ漁によるものです。今は、この漁をする漁師もほんのわずかになりました。残念です。
其の1 穴子の生態はまだ不明
穴子には、いろんな種類がありますが我々が普段食べているのはマアナゴです。これ以外にゴテアナゴ・クロアナゴなどがあります。
先程お話ししましたように、穴子の生態はまだ不明なことがほとんどです。
マアナゴの葉形仔魚(レプトケファルス幼生)は、春期に黒潮に乗って日本沿岸の各地で大量に出現します。一般にはしらす漁や小鰯の
網などで混獲されています。また、産卵親魚が確認されていないことから、マアナゴの主たる漁場である日本沿岸地域では産卵活動は
行われていないものと思われています。現段階では、彼らの産卵場所についての諸説としては、南西諸島周辺海域また、東シナ海などが
色々な状況証拠の蓄積により濃厚になってまいりました。
太平洋で産まれた穴子の幼生たちは黒潮にのって日本各地の海岸に着岸しています。
毎年3月から4月を中心に小鰯やイカナゴなどの船曳網に混獲されるこの幼生たちは、岡山から関西にかけての春の風物珍味として
料理屋などで 食卓に供されます。一般には「のれそれ」とか「べらた」とかよばれますが、小さな細い笹の大きさで半透明の白魚を
大きくしたようなものです。
ここ数年ではこの幼生の捕獲が太平洋高知沖で盛んに行われるようになりました。高速道路を縦断して、高知から岡山へそして、
飛行機で大阪へひとっ飛び。のれそれの乱獲が心配されます。
其の2 穴子の漁場
穴子の漁場として名を残しているのはは、昔からここ瀬戸内海一帯の河口、特に兵庫県の加古川の河口堰や広島湾の太田川河口堰、
そして大阪湾淀川河口堰等遠浅の条件を持っています。古代よりたくさんの海洋民族の集まる恵まれた海域でした。
全国で見るとこうした大きな川が流れる河口堰にはあなごが育つのに好条件が揃っているようです。あなごといえば、江戸前と
いわれますが、東京湾の江戸川河口堰も同様にあなご漁の盛んな地域でした。
こういう環境で獲れるあなごは、けっして大きくはないが身が肥えてずんぐりとした頭が小さく短いのが特徴です。特にお腹の部分が
飴色に輝いているようなものが(泥地において海老やはぜ、ごかい等線虫類などの餌をしっかり食べ脂ののったサイン)マアナゴの
中でも特級の味を持っています。
其の3 あなごの美味しい条件
一つ、ダムのない落葉樹に覆われた河川が流れ出る河口一帯で捕れるあなごであること。
二つ、その河口堰の泥地に潜む小魚、小海老、そして多種な甲殻類や線虫類を餌にしているあなごであること。
三つ、海流が有り、おだやかな湾に育つあなごであること。
、上記の三つの条件を満たしていてもダメになる場合がありますが大切なことは次のことです。
それは、あなごはストレスが溜まりやすい生き物であるということです。どんなに脂がのった黄金色の身の肥えたあなごであっても
生け簀などに生かしておかれたものは、あっと言う間に身が痩せ油が落ち、皮が固くなり、ほんとうにこれが同じあなごかと
思わせるものに変わってしまいます。このことは、大量にあなごを扱う業者においてはあまり意識されず、せっかくの良質の
あなごが毎日たくさん台無しになっています。
生け簀にあると新鮮であると思われる方々がほとんどであると思いますが、魚はすべからく捕ったらすぐしめる、これが基本です。
上記の四つの条件を満たしているだけでは「広島湾の穴子が年中美味しく」は疑問です。
宮島周辺の広島湾にはたくさんの牡蠣の筏が島々を囲んで点在いたします。この筏にゴワゴワと吊り下がる牡蠣の殻に
住み着いたゴカイや小さな生き物たちの住み処、これが条件かもしれません。
このような条件を備えた場所は、瀬戸内海に限らず、日本各地、世界各地に点在しています。これからも当地の美味しさに引けを
取らない味の穴子を求める私の旅は続きます。
其の4 穴子の養殖は出来ません
日本国内においてあなごの漁は九州五島列島から北は岩手県にいたるまで広く行われています。わたしも全国を回って
美味しいあなごをさがしておりますが、やはりすべての条件を兼ね備えたあなごは水揚げ量全体においても多くは有りません。
広島県においてもあなご漁の方法が他地域で行われている筒漁に変えられています。従来のかご漁では、小さなあなごも捕獲を
してしまいます。筒漁においては、一定の穴10ミリ〜14ミリが開けられており小穴子については逃がすことができるようになっています。
稚魚からの養殖技術が困難な穴子は天然の貴重な魚類といえます。
穴子の養殖は出来ませんが、現在、一定の大きさの穴子を捕獲後、餌を与えて大きくすることは出来るようになっています。
しかし水質の管理や穴子の餌の確保ともたらされる穴子の味は、今後の大きな課題でもあります。私たちが流通で食べることが
出来るうなぎはほとんどが養殖であり、私たちはうなぎの天然の味をもはや知らないでいます。
其の5 穴子の輸入
あなごの輸入は、遠くはチリ、オーストラリアからもありますが、多くは近く韓国、中国がその本流となっております。
特に韓国西方海域、中国渤海湾南方海域にはたぶんその餌の豊富さから、普段の国内産の穴子には無い、豊満といえる肉付きの
豊かで脂の乗った特級品があることが知られていましたが、中国の工業化による大きな影響は天津から大連にいたる海域に
及んでいるといえます。
うえのにおいては、この数年間その正体を見極めるために中国の穴子漁の調査を進めてまいりました。
今後の国内産の穴子の漁獲量が伸びることはありません。
理由は、先述のような状況に加えて、環境の変化、穴子を生業とすることの出来る漁師が世代交代していないことが要因です。
穴子漁は一子相伝の様相があり、親子代々続く漁師さんはどんな季節でも一定の量を確保するデータと知恵と根性を
持っているのです。
潮の流れ、穴子の移動する時間、天候とのかかわり、これまで多くのことを教えてくれましたが、私が漁に出ることは叶いません。
せめてうえののために日々の頑張りを届けてくれる彼らにそのことを伝えて行くばかりです。
穴子漁は、昼間の作業、夜の漁、時間の不規則への辛抱が最も求められる漁のひとつです。
韓国・中国からの輸入品が市場の多くを占めているのは今も昔も変わりません。その多くが加工品として冷凍輸入されてきましたが、
一方で日本の市場は、活かされたものが良いもの、高価なものとされてきたためにせっかく脂の乗った美味しい上等の穴子も
狭い生簀の中でストレスと餌の無い状態が続くため、脂は落ちて、皮を硬くしてしまい、韓国からの移動の時間が穴子の質を落とし、
そのことによって商品への信頼も薄く、単価も安くされていました。
現在では韓国、中国沿海で水揚げされた穴子もかつてのような粗悪な扱いによるものは淘汰され、日本の高度な真空冷凍技術が
導入されたことで冷凍での鮮度が保たれるようになりました。
これまでの一本一本の活きた穴子の良し悪しが判る現場の選別目が出来るのはこれからと言う状況、かつ、活かされていれば船内や
作業場の生簀の脂の抜けた穴子であってもお構いましの状況に対して、改善へのすみやかな取り組みが始まっており品質の向上が
待たれます。
其の5
今から二十九年前に刊行された、駅弁を主にする作家瓜生忠夫氏の駅弁物語に書き残してくれた一文が思い出されます。
あの時も地元漁師さんの世代交代が不足していることがあり、歴史ある食材と食事が失われることへの憂いを文化の喪失のひとつだと
書かれていました。今も心深く刻まれています。
あなごの研究学会の目的には、穴子の資源を守るだけではなく、生業とする漁師を守ることも大きな課題とされておりました。
・・・・・・・・続く